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2023年度 文学散歩の報告(11月11日実施)
日本語日本文学科では、毎年秋の休日に文学散歩を開催しています。教員、副手、学生が参加し、文学作品や作家にゆかりのある地、日本文化を学べる施設などを巡ります。これまでには、川越、鎌倉、早稲田、上野、乃木坂などを訪れました。この文学散歩の企画や進行などは、有志の学生による日文委員が中心となって行っています。日文委員とはクラス委員のような係で、春の新入生歓迎会なども企画し、学科を楽しく盛り上げてくれる存在です。
さて、2023年度の文学散歩は11月11日に開催され、浅草?押上周辺を散策しました。今回巡った場所は、郵政博物館、業平橋、吾妻橋、浅草?仲見世通りです。
はじめに訪れた郵政博物館は、日本最大約33万種の切手や重要文化財を含む郵政?通信関係資料が展示される、郵便や通信の歴史と文化に関する博物館です。郵貯や簡保について体験型コンテンツで楽しんだ学生からは、「ゲームを通して貯金や保険の大切さを改めて考える機会になった」との声もありました。また、郵政博物館で博物館実習を行った学生による歴代丸型ポスト等の展示品説明もあり、これまでの学びを垣間見ることもできました。今日の郵便局になるまでの過程や震災当時の郵政事業を鑑賞し、手紙などで伝える気持ちの重要性を再確認できたのではないでしょうか。
郵政博物館を見学した後、業平橋、吾妻橋に向かい、教員から2つの橋についてのレクチャーを受けました。業平橋では、橋名に冠する「業平」に関わることとして、『伊勢物語』の「東下り」のお話をうかがいました。隅田川で業平が詠んだ和歌「名にし負はば いざ言問はむ 都鳥 わが思ふ人は ありやなしやと」に出てくる「都鳥」は、現在のユリカモメと言われていることや、現在の言問橋は、この歌の「言問はむ」から名付けられたとも言われることなど、業平橋をめぐるさまざまなお話から、業平が確かにここにいたのだと、平安時代の面影が我々の身近にも残っていることを感じることができました。
吾妻橋では、浅草を舞台にした小説や文化の発展について学びます。江戸時代、参詣目的の半分は観光と言われますが、それは浅草がエンターテイメントの町であるからだそうです。また、近くに吉原遊郭もあったため、性産業とセットで文化が発展していき、その一例として飲食業も盛んになりました。さまざまな意味で、聖と性と俗が混じった繁華街でしたが、明治に入ると浅草公園として整備され見世物小屋が、大正に入ると映画館や浅草オペラができます。これらは、現在の吉本新喜劇や宝塚歌劇団などの舞台演芸に繋がっているとのことです。また、昭和モダニズム文学と呼ばれる、川端康成の長編小説『淺草紅團』から、関東大震災以降から復興していく大正末から昭和初期の浅草の不穏な、しかしダイナミックでもある人間模様をうかがい知ることもできました。さらに、この作品は浅草ブームの火付け役ともなり、信仰を求めるご年配の方に対して若者たちは浅草という場所をモダンな風俗の歓楽地として楽しんでいたそうです。文学作品による扇動力を垣間見ました。その他にも、『浅草の灯』『あさくさの子供』『異人たちとの夏』などをご紹介くださり、学生たちは観光以外の魅力である、浅草の地と文学の親和性を感じられたのではないでしょうか。
最後に、浅草?仲見世通りを散策した後、4年ぶりに開催するお食事会で今回の文学散歩は幕を閉じます。お食事会は皆が楽しみにしているひとときで、この会を通じてさらに教員と学生の親睦を深めることができました。
文学散歩では、教員とともに歩きながら他愛もない会話だけでなく、教員が携わる竞彩篮球推荐分野についても詳しく解説を聞くことができるので、学生にとっても有意義な時間となったのではないでしょうか。教員と学生の双方が大学で見るのとはまた違った互いの一面を知ることができたと思っております。次回の文学散歩の開催地はどこになるのか、今から待ち遠しいです。
(日本語日本文学科竞彩篮球推荐室)