想像力の働きと、「作品」によって生まれる結びつき。

わたくしが専門とする美学では、美しいものや芸術作品を通じて、どのような体験や認識が得られるのかを竞彩篮球推荐します。例えば、「夕焼けの空」を目にしたとき、その美しさに感嘆の声を上げたり、スマホのカメラで写真を撮ったことはないでしょうか。また、空がオレンジ色やピンク色に染まる理由を知りたくなったり、ときには一人でいてもの悲しくなったり、また雄大な空に向かって何かを祈ったりしたことはないでしょうか。同じ夕焼けの空を前にしていても、人によって、感じることや考えること、それに向かって行うことはさまざまです。わたしたちは、空の色や夕日の輝きを感覚的に捉えると当時に、そこからいろいろな思いや考えを広げながら、夕焼けの空を体験するのです。美学では、こうした「感覚的な認識」と、それとともに生じるいわば「想像的な認識」とを関連づけながら、その経験（現象）の成り立ちと意味を総合的に捉えようと試みます。わたくしは、特に、芸術作品を創り出すさいに、創作者が発揮するとされる「想像力」の働きと、そのさいに創作者が感じている「自己」（自分自身）の在りように関心をもっています。想像力はいったいどのようにして働いているのか、またそれを働かせているとされる創作者は、そのさい自分自身をどのように捉えているのか。想像力によって実際に生み出された作品を取り上げながら、創作者自身の証言や哲学者?思想家たちの想像力や創造性をめぐる考察を参考にしながら、その実態に迫っていきたいと考えています。

想像力については、これまでさまざまな考察がありますが、その実態は思いのほかよくわかっていません。その理由はいくつか考えられます。そもそも想像力として捉えられているものは多様です。存在しないものを創り出す万能の能力だと考える人もいれば、間違いをもたらすだけのものだする人もいます。また、想像力を発揮している人が、どうしてそれが働くのか、そのとき自分自身が何をしているのか、定かにわかっていない場合も多くあります。ただし、想像力とされる能力が働くことで新しいものが生み出される、という考えを多くの人々が持っていることも事実です。この力が明らかになっていけば、それを通じて、人間のもつ可能性、とりわけその創造性が捉えられていくことでしょう。また、想像力によって創り出された「作品」を中心にして、それに関わる人々（作者、演者?演奏者、鑑賞者、評論家?理論家、愛好家）の間で、何らかの繋がりや結びつきが生まれることはないでしょうか。わたしたちは、もしかすると想像力の働きを通じてこそ他者と結びつくことができるのかもしれません。想像力を考えることは、人々が、感じ合い、通じ合い、結び合うことの実際を捉え、その可能性を見出だすことだと思います。