1. HOME
  2. 受験生の方
  3. 聖心Voices
  4. 真摯に目の前の患者さんと向き合う

真摯に目の前の患者さんと向き合う

  • 心理学科

秋山 愛子 Aiko Akiyama (2017年3月卒業)

竞彩篮球推荐で聖心を初めて訪れた時に在学生が笑顔で話しかけてくださったこと、キャンパス全体を包む温かい雰囲気、どちらも強く印象に残っています。先生方と密にコミュニケーションを取りながら少人数で学べる環境に惹かれて入学し、一生学び続けたいと思う学問に出会いました。尊敬する先生方から人 生の先輩として多くのお話を伺い、それは今も私の糧となっています。

迷ったらとりあえず挑戦してみよう

もともと子どもが好きで幼稚園教諭をめざして大学に入学しましたが、人の心を探求する心理学にも興味があり、1年次には教育学と心理学の双方を中心に取れる単位を最大限履修しました。2年次進級時に、生きづらさを抱える子どもたちの支援をしたいと思い心理学専攻に進みました。
これには大学公認のボランティア活動で出会った、児童養護施設のお子さんとの関わりが影響していたかもしれません。この活動で私は6年間同じお子さんのもとに通い続けました。いろいろな意味で困難を抱える子どもたちに寄り添う大切さを知った、大きな出会いです。

また、聖心では自分の学びたいことを組み合わせて自由にカリキュラムを組むことができるので、主専攻の心理学の講義に加え、幼稚園教員特別プログラムも履修しました。心理学と教育学の2つの視点から学びを深めることができ、とても有意義でした。履修科目が多くて大変でしたが、講義の合間に学内のテニスコートを借りて友人たちとテニスをしたのは楽しい思い出です。

さらに1年次の夏休みには、大学の短期留学制度を利用してイギリスの大学で語学研修に参加し、一般家庭にホームステイしました。出発前から手厚いサポートがあり安心して出かけることができました。

こころは行動にあらわれる

ボランティア活動では、毎週通って担当のお子さんと一対一で遊んだり、勉強をみてあげたりしましたが、お子さんが幼い頃には泣き続けるばかりで何もできず帰る時もありました。今思えば、その子なりの言葉にできない思いを泣くことにより訴えていたのだと思います。長く通い続けるうちに信頼関係がはぐくまれ、ありのままの自分を見せてくれるようになりました。この経験は心理職となった今、気長に患者さんに寄り添い、信頼関係を築くことからすべてが始まるという信念につながっています。
また4年次の幼稚園での教育実習では、園児の園での言動の変化から家庭生活の中の変化が推察されたこともありました。こうしたボランティア活動や実習での経験から、大人が考えている以上に、子どもたちは抱えている思いを言葉で表現することが難しく、その抱えきれない思いが行動にあらわれるということを強く認識しました。心理学の講義で学んだ「こころは行動にあらわれる」そのものでした。

さらに講義では、ひとつの事例に対する支援方法を討論して学生それぞれの考えが異なっても、どれが正解ということはなく「答えはひとつではない」ということを学びました。支援の現場はまさにそのとおりで、一見同じ症例に見えても、本人が抱える問題もご家族が必要とする支援も、一人ひとり異なります。また支 援の仕方もひとつとは限りません。まさに答えはひとつではないのです。

家族もともにサポートする

大学院2年次に実習生として一年間、病院の児童精神科で支援プログラムに陪席しました。そこでは子 ども自身と同じくご家族に対する支援の大切さを知り、今、現場であらためてそれを痛感しています。

子どもたちが抱える問題は、親子関係、不登校、発達障害など社会的に問題になっているものが多く、その幾つもが複合的に重なっているケースがほとんどです。残念なことに、発達障害は親の躾の問題という誤った考えが、状況を辛くしている場合もあります。目の前のお子さんとご家族が何に困っているか一緒に考え、客観的な視点からヒントを出すことで親子の関係性が変わり、お子さんにもご家族にも良い変化が生まれることもあります。

常にどういうサポートがお子さんとそのご家族に役立つのか、目先の変化だけではなく、長期的にどう役立つのか、どう影響を与えるのかということを考えながら仕事をしています。これは常に他者のために何ができるかを考え行動する聖心スピリットとつながるものだと感じています。

学び続けることの大切さ

心理職は学び続けることを求められる職業です。
学会や講習会に参加して知見を広げ、論文や資料を読み研鑽を積む努力は欠かせません。
また患者さんやご家族を理解する土台にもなるので、自分自身が様々な経験を積み重ねて成長し続ける努力 も必要です。
さらに受け持ちの患者さんに対する支援について定期的に検討し、スーパーバイザーにアドバイスをしてもらいます。私は、職場の異なる心理職同士の症例検討会に毎月参加し、学生時代にお世話になった先生からご助言いただいています。多くの症例を知ることも、一つの症例に対する複数の視点からの意見を聞くことも、どちらも大きな学びです。

これからも心理職として患者さんと真摯に向き合い、患者さん自身の力で少しずつでも良い方向へ進んでいけるように、丁寧に支援したいと考えています。患者さんが変わっていく様子を見ることは大きな喜びであり、その喜びが新たな患者さんに向き合う原動力にもなっています。
自分は何の役に立つのか、社会のなかで誰かの助けになっているのか、常にそういう視点を持って考えることができるのは、聖心での学びのおかげと感謝しています。
いつか患者さんに「あのとき出会えてよかった」と思ってもらえるように、その時その時に自分ができることを精一杯努めていきたいと考えています。

  • 心理学科
秋山 愛子 Aiko Akiyama (2017年3月卒業)

東京大学医学部附属病院
こころの発達診療部 公認心理師?臨床心理士
教育学科心理学専攻(現:心理学科) 2017年3月卒業
博士前期課程人間科学専攻臨床心理学竞彩篮球推荐領域 2019年3月修了
※所属?肩書きを含む記事内容は、インタビュー時(2024年)のものです。

聖心Voices 一覧ページへ戻る